平成 21 年度センター試験(本試験)数学 II・B 第 5 問を解いてみたので紹介します.予備校のサイトなどでも解説等が掲載されていると思っていたら統計のこの問題などは選択率が低いのか公開されていませんでしたので,参考までに見ていただけたらと思います.他にもっと良いとき方があるかもしれませんので,あれば教えてください.問題自体は大学入試センターのウェブサイトや予備校のサイトに今日の時点ではありました.参考までにご利用ください.
全体として求め方は教科書レベルがわかれば解けると思います.一部うーんというところもありますが,理解していれば簡単に求めることもできるので良い問題と思います.実際のところ計算時間との勝負になりそうです.ただ統計的に意味のある問題かというと一部では少し疑問がありますが,数学の中での統計と考えると仕方ないのかもしれませんね.総じて,データの空欄を求めている問題(4 までの問題,3 の一部を除く)は統計では欠損値の扱いで使わなくはないですが,通常のデータ分析では特殊な例のため「うーん」と思いますが(特に 4 の問題は実データ分析であるかな…),後半の 5 と 6 の問題は,教科書レベルの統計をしっかり理解していたら計算せずに求められるため良問と思います.
(1) の問題:テストの結果のデータから該当するグループの平均値を求める問題と平均値などがすでに分かっているため残りの該当する個体の数値を求める問題.最初の問いは該当する数値から(40+63+…+43)÷5=48.0 点(←アイウ).個人的には全体の平均値が 45.0 なのでこれを仮平均値として仮平均値を用いた平均値の求め方をする方が少しは計算が楽かもしれません.また得点 A は全体の平均値が 45.0 点で他の人の点数がすべてわかっているので,(40+63+…+43+A+51+…+34)÷10=45.0.A について方程式を解けば,(414+A)÷10=45→414+A=450→A=450-414=36 点(←エオ)となります.ただここで,I 班の平均値がわかっていることや四捨五入などで情報を落としていないことがわかっているので,40+63+…+43=48.0×5=240 であることがわかっていると少しは計算が楽かもしれません.もしくは先の解法ですでにこの合計を求めている場合はそれを利用することもできますね.こちらももちろん仮平均値を用いた平均値の求め方を利用しても少しは楽かもしれません.総じて「仮平均値を用いた平均値の求め方」は覚えておくと利用価値がありそうですね.
(2) の問題:相関係数を求める問題.相関係数は対応する二つの変数の共分散(偏差積の合計を標本のおおきさで割った数値)と二つの変数のそれぞれの標準偏差がわかると求まります.今回問題ですでにともに分散が 101.2 と与えられているので,ともに標準偏差は √(101.2) になります.したがって,それらを乗じ,分母が 101.2 だと分かります.この辺りはデータから直接標準偏差を求めるよりもこれらを利用したほうが計算時間の短縮のつながり,相関係数を理解しているかが一つのキーになりますね.II 班の個々の数値はすでに求まっていますが,他の平均値などはまだ求まっていないため,ひとつずつ計算していきます.II 班の 1 回目の数学の平均値 (36+51+…+34)÷5=42,または全体の平均値から 1 回目の数学の合計は 45×10=450 点.1 回目の I 班の数学の平均値から 48×5 = 240 点.この二つの数値から II 班の 1 回目の数学の平均値は (450-240)÷5=42 となります.また 1 回目の II 班の英語の平均値は (48+46+…+50)÷5=56 点.これらから偏差を求めて掛け算をもとめる表(1 列目:数学得点,2 列目:英語得点,3 列目:数学の偏差,4 列目:英語の偏差,5 列目:偏差積)を作成し,共分散は 28.2 と求まります.最後に分子÷分母をして,相関係数が 28.2÷101.2=0.279→0.28(←カキク)と求まります.この問題は結構時間がかかるように思えました.
(3) の問題:中央値を求める問題.中央値は個々の数値を並べ替えた真ん中の数値になりますので,B の値を除いて 1 回目の英語の点数を並べ替えると,36, 43, 46, 48, 50, 55, 64, 65, 71 となります.今回は標本のサイズが 10 なため,5 番目と 6 番目に注目します(この意味では,4~7 番目あたりの数値のみがわかればよいですね).ここで数直線を描きながら B の値がどこになるかでケース分けをします.(i) B≦48 のとき(ただし B は整数.以下略),5 番目と 6 番目が 48 と 50 となるので,49.(ii) B=49 のとき,49 と 50 になるので,49.5.(iii) B=50 のとき,50 と 50 となり,50.(iv) 51≦B<55 のとき,50 と B の値になります.考えられるのは,B=51, 52, 53, 54, 55 となり,それぞれの中央値は,50.5, 51, 51.5, 52 (ただしそれぞれの中央値を求める必要はこの問題ではありませんね).(v) 55≦B のときは,50 と 55 となるので,52.5 となります.したがって,全部で 8 通り(←ケ)になります.また全体の平均値が 54.0 点と与えられたので,平均値を求める式から,(43+55+B+64+36+48+…+50)÷10=54 より B は (B+478)÷10=54→B+478=540→B=62 点(←コサ)と定まり,中央値は上述したように 52.5 点(←シスセ)となります.この問題は数値の順番を考えるため数直線上に表記することが間違いないようにするコツかもしれません.
(4) の問題:数値の関係を求める問題.題意を踏まえて,関係式を考えると (I 班の平均値)=(II 班の平均値)+4.6→(60+61+56+60+C)÷5=(D+54+59+49+57)÷5+4.6→60+61+56+60+C=D+54+59+49+57+23→C-D=219+23-237=5←(ソ).これは数学の関係式ができれば難しくはないですね.
(5) の問題:適切な散布図を求める問題.これは散布図の意味がわかれば格子点に乗りそうな特定の数値や最大値・最小値などの数値に着目して求められます.1 回目のクラス全体の数学と英語の関係の散布図は,英語の 36 点があるため,0 のグラフ(←タ)以外は英語で 40 点未満がないため,あり得ません.次に 2 回目のクラス全体の数学と英語の得点でも,同様に考え 0 のグラフはありえず,3 のグラフには英語の 40 点がないため選択外.残り特徴的な 英語が 60 点,数学が 56 点の数値の点を探して,1 のグラフ(←チ)が正しい.また,相関係数のいいかえると 0 のグラフと 1 のグラフの相関係数の組み合わせなので,グラフをみて,0 のグラフは相関が見えないため,相関係数は 0 に近く,2 か 3 の選択肢になり,1 のグラフはどちらかというとやや正の相関が見えますので,2 と 3 の選択肢のうち,正の相関係数をもつ 2 (←ツ)となります.ここは散布図と相関係数の意味がわかれば難しくなく,逆に理解していないと全く手が出せないでしょう.もちろんいちいちグラフや相関係数をもとのデータから求めていると時間が足りないと思います.
(6) の問題:平均値と分散とデータの関係に関する問題.データのここの数値の合計が変わらないと平均値の値は変わらない(「変更前と一致」の1 ←テ)ことや分散が散らばりを表していることを踏まえると題意により散らばりがなくなるため,「変更前より減少」の 0(←ト)とすぐ分かります.これも統計量を理解していると容易で,ここの数値からそれぞれを求めると時間がかかったと思います.
2009/07/25
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